1964年6月に発生した新潟地震は、我が国の近代都市が初めて経験した新たな形態の地震災害でした。この災害調査を契機として、防災に関わる有識者チームと国・地方公共団体の行政官が協力して、都市防災・災害対策に関する各種の共同プロジェクトに取り組むようになりました。こうした共同研究活動は多くの先駆的で実際的な成果を上げ、高い評価を得て今日の我が国における都市防災の基礎を築きました。

  当研究所は、こうした経緯の中で都市防災の研究推進役ならびにその普及という社会的要請の下に、当時共同プロジェクトに関与された方々の支援と協力によって、1970年6月、法人格をもった組織として設立されました。震災対策から出発した調査研究は、その後、地震対策のみならず、市街地火災やビル・地下街火災、爆発・危険物災害・交通機関災害から噴火・地すべり・風水害等の自然災害へと拡がり、都市・建築・地域社会・製造施設・ライフライン等の広範な分野の防災・安全対策並びに危機管理対策を扱ってきました。

  この間、当研究所は、常に災害・安全問題を総合的に取り扱う第一線の防災シンクタンク・コンサルタントとして、国・地方公共団体・企業等との間で幅広く研究・調査活動を続けて参りました。

  特に、近年における都市空間の高密化、人口構成の高齢化をはじめ、情報手段の高度化や社会活動の複雑化が進む中で、災害・事故対策は専門領域を越えて総合性と高質性が強く求められるようになりました。このことは、実際の災害・事故事例を多角的に分析することによって、普段は顕在化しない様々な施設・社会活動・自然現象の中に存在する諸関係を明らかにし、それらを安全・防災対策に活かすことの重要性を意味します。こうしたことから、当研究所では1982年7月に、安全・防災・保安に関わる各分野(都市・土木建築・気象・医療・環境・地震・危険物・巨大技術・消防等々)の研究者有志からなる「災害事例研究会」を発足させ、あらゆる災害・事故事例の総合的な分析とデータ・ベースの構築を開始しました。さらに、データ・ベースの一層の充実を目的として、産業界のご支援を得て1993年に「災害情報センター」を設け(早稲田大学理工学総合研究センター内)、災害情報に関する研究とデータの提供を行うようになりました。また、1998年には同事例研究会を「災害情報センター研究会」を社会資産としての災害分析データの蓄積・提供を行うNPO組織として確立し、その全面的な支援を行っています。

  当研究所は、以上のような沿革を経て今日に至っておりますが、「主な業務経歴」に紹介するように極めて広範な分野における調査研究業務等を通じて、都市防災の研究推進役ならびにその普及を行って参りました。